小平で映画を見る会


いっしょに映画を見て、話そう!

ご来場ありがとうございました。

「働くこと育てること、そして今―落合由利子写真展・スライド&トーク」は無事終了いたしました。多くの方にご来場いただき、スタッフ一同感謝しております。

働くこと育てること、   そして今
―落合由利子写真展・スライド&トーク―

9月9日(火)〜13日(土)写真展示
9月13日(土)13時半〜15時 会場にてスライドトーク、その後フリートーク

※スライド上映中は写真展示をご覧いただけません。
※乳幼児、お子様連れ可。出入り自由ですが、ご配慮ください。

写真 落合由利子

場所: 小平市中央公民館ギャラリー
入場無料



だれのなかにも物語がつまっている

 私が落合由利子さんの著書『働くこと育てること』(草土文化)に出会ったのは、娘が生まれた時でした。
 子どもと生活する17人の男女の一日に同行し、その人の生活のリズムに入って記録した写真と文。仕事や生活、子育てのかたちは驚くほど違うのに、1人1人の悩みや喜びに揺さぶられ、なぜか励まされる。「いいも、悪いもごっちゃにあって『生活』だし、『子育て』だし『働くこと』」という言葉に、胸が内側からぼかぼかとあたたかくなったのを覚えています。

 『働くこと育てること』の写真展は全国をめぐり、年齢も性別も異なる人たちが、今直面していることや過ぎた日々、そして将来について、言葉を交わし合ったと聞いています。他人の物語に耳をすますことで、出てくる言葉、交わす言葉があり、自分を見つめる時間がある。そんな時間を、この地域でたくさんの方と共有できたらと思います。

 落合さんは、自分自身の物語の中でどのように写真と向かい合ってきたのでしょう? ルーマニアの山間の村で生活しながら撮影した「CORNEREVA」(1992)から、「はじまり―写し続けた日々」(1995)、「働くこと育てること」(2001)、「絹ばあちゃんと90年の旅―幻の旧満州に生きて」(2005)まで、人が生きる営みにシャッターを切り続けた作品をたっぷりと展示します。
 最終日には、スライドで写真を見ながら落合さんの話を聞き、参加者と交流するスライド&トークを予定しています。ぜひ、お誘い合わせてご参加ください。

小平で映画を見る会 尾川直子


落合由利子 プロフィール
1963年 埼玉県生まれ
1986年 日本大学芸術学部写真学科卒業
1987年 写真スタジオを経てフリーランスフォトグラファーとして独立
1989〜90年 ベルリンの壁崩壊直後の東欧諸国に渡り、人々のポートレートを撮る
1991〜92年 在ルーマニア
2007年〜 戦争の時代を経て生きてきた方々のポートレートの撮影を始める
現在、『母の友』(福音館書店)に「戦争は知らないけれど」を連載中

展示作品
「話したい」(1989)
東欧の人々のポートレート

「CORNEREVA」(1992)
ルーマニアの山間の村でみつめた命にあたる光

「はじまり―写し続けた日々」(1995)
結婚、出産、別居とめまぐるしく変わる現実の中で自分を支えるようにして撮り続けた写真

「働くこと育てること」(2001)
働きながら子育てをする38家族の日常のドキュメント

「絹ばあちゃんと90年の旅―幻の旧満州に生きて」(2005)
伊豆の山中に一人暮らす絹さんとの対話の中で、歴史・個人・今・未来をみつめる

写真展
「日本国ルーマニア人物語」(1997フォーラム横浜)
「働くこと育てること」(2001〜横浜女性フォーラムほか全国巡回) 
「落合由利子写真展」(2003滋賀県立水口文化芸術会館) 他

著書
『働くこと育てること』(草土文化)
『感情のABC』(岩川直樹・文 草土文化)
『絹ばあちゃんと90年の旅ー幻の旧満州に生きて』(講談社)



〈受けとめようとする〉人――写真家・落合由利子さんについて

 落合さんと出会ったのは1990年頃だったと思う。その時落合さんの仕事部屋の壁に、「話したい」という、落合さんの写真へまっすぐにつながる言葉が貼られていたのを思い出す。その頃落合さんは最初の東欧撮影から帰ってきていた。ベルリンの壁が壊れ、東西冷戦の終焉と共に世界の地図が変わり始めていた頃だ。歴史の変わり目を生きる人々に会い、落合さん自身、時に立ち止まり、揺れながら、全身で、まるで自分のことのように受けとめようとしていたように思う。そしてそこから生まれる写真は素敵だった。優れた写真家は、目の前の現実を正しく越えて行くことの為のみに写真を撮り、そして思考する。その後落合さんの人生そのものも、彼の地から大きく変わることになる。

 2001年に落合さんは一冊の本を出した。働きながら子育てをするお母さんやお父さんに一日に同行取材した本「働くこと育てること」(草土文化 2001年)だ。当たり前だけど僕たちの日常は、たくさんの喜怒哀楽とそして矛盾に満ちている。人が普通に一日一日を生きている姿を見ることでとこちらが元気になることの不思議。久しぶりに見た落合さんのこの仕事は輝きに満ちていた。

 落合さんの写真の魅力は、一貫してそこにあるものに対しての眼差しのしなやかさにあると思う。上からでも下からでもない目線。相手を正面から見据えたら、見たつもりがそこに自分も写り込むというパラドクスを写真は持っている。安全地帯からものを見ない。落合さんの写真の持つ輝きを安易に生きている者への敬意などと言えば平板だけど、今を生きている自分をも相対化しながら世界を見るのは容易ではない。人と人が共に生きるという、そもそもの矛盾。そこから日々生まれる写真に光沢が宿っている奇跡。

 ルーマニア、働くこと育てること、絹ばあちゃんと90年の旅、所沢の日々の写真、これら落合さんの生きて来た時間から生まれて来たこれらの写真は、そのテーマや背景を離れて、見る人を写し出す鏡になるだろう。今回そうした写真の展示を見るのが楽しみだ。そしてやはり、いろいろな話を落合さんから聞きたいと思う。あの日のベルリンの空のこと、ルーマニアの土の匂いのこと、子育てのこと、絹さんから聞いた満州のこと、そして今のことを。

(2008 賛同人、写真家 北野謙)


*この企画は賛同金で運営しています。

主催:小平で映画を見る会 
TEL:042-332-2647 FAX:042-327-9330(島)
e-mail: kodaira_movie@yahoo.co.jp
店舗情報
店舗名 小平で映画を見る会
住所 小平市
TEL 042-332-2647(島)
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